トップダウン【知恵→知識→情報→データ】

前回はデータ・情報・知識・知恵の階層構造においてデータ→情報→知識というボトムアップという階層構造間の関係についてまとめました.

今回は知恵→知識→情報というトップダウンによる階層構造間の関係についてまとめます.

知恵において,能力≒スキル

前々回の記事で知恵とは知識を妥当性・信頼性高く使用できる能力という定義をしました.

能力とは辞書的な意味に使用しています,つまり物事を成し遂げることのできる力のことです.

ただし,知恵というものの実際に目を向ければスキルという概念の方が適しています.

訓練せずに身についている知恵の存在も否定はできませんが,ここでは訓練して身につけることを前提とすることにして知恵の対象範囲をスキルとします.

知恵→知識

スキルというものは,経験を昇華させた人々(職人や専門家など)がもっていることが多く,そもそも知恵というものが表面化していないことが現実では多いのです.

したがって知恵→知識とは知恵の表面化,つまりスキルを記述することがその過程となります.

スキルの記述方法には,映像化や機器による計測などの物理測定や内省報告などの心理測定があります.

いずれの方法にしろ,一つの記述方法でスキルを完全に記述できるわけではないが知恵を知識として認識できる範囲での記述がなされる必要があります.

知識→情報

知識から情報へのトップダウンは,知識を分割することからはじまるのでそのイメージをどーーーん.

知識の分割は体系化された単位を探すことですが,相互に依存している場合無理に分割せずに大きな塊としてよいでしょう.

肝心なことは分割した知識同士に重複がないようにする工夫することです.

もし重複をなくすことができない場合は重複の量をできるだけ少なくすることで対応するしかありませんが,そのときはつぎの手続きが正しいかどうか不明になる可能性があります.


つぎに,細かくなった知識の中にある推論情報(もしくはデータ)の関係性から情報を見出すイメージをどーーーん.

推論情報(もしくはデータ)の関係性から情報を見出すにはつぎの二つを考えます.

  • 推論情報(もしくはデータ)間の推論を導き出す.
  • 推論情報(もしくはデータ)の集まりの意味を導き出す.

ただし,注意が必要なのは上記二つのことから導かれる情報は唯一とは限らないということです.

論理的に正しい推論と推論情報(もしくはデータ)の集まりとして妥当な意味を満足する情報の組合せが複数存在する可能性があるのです.

つまり細かくなった知識から情報へトップダウンするための上記条件は必要条件ということになります.

また,ボトムアップでは情報という集合の中にあるデータや推論情報同士に関係がなく(独立性といいます)できましたが,トップダウンでは多くの場合そのような状態にできません.

それは意味のあるデータとして情報を優先すると,データ(もしくは推論情報)間の関係性を重視してしまうからです.

したがって,ここではデータと推論情報の区別を最優先とし,二次以上の情報の区別は適当にするとします.

(注)
細かくした知識同士に重複がある場合,上記二つの条件が矛盾を引き起こす可能性があります.

このことの詳細は時間のある時にまた別記事で考えてみようかと思います.

情報→データ

情報の一番基本的なもの,つまり一次情報は取捨選択されたデータであることを前回のボトムアップで述べました.

実は取捨選択という選択はトップダウンの一番はじめである「考える知恵を選ぶ」という過程ですでに行われています.

したがって,知恵→知識→情報というトップダウンからデータの取捨選択を推論することはできません.

つまり情報→データというトップダウンは一次情報というところまでしか得られないのです.

情報→データにおけるデータの取捨選択を考えるためには新たにデータからボトムアップすることで知識を再構成するという方法になります.

結果として情報→データというトップダウンは部分的(一次情報まで)しか行えず,実質は情報←→データというトップダウンボトムアップの組合せになるわけです.

知恵→知識→情報の例

知恵→知識→情報の例はナレッジマネジメントの分野に豊富です.

それはこのトップダウンナレッジマネジメントの手法,特に暗黙知形式知にするという過程に対応しているからです.

具体例として,金属削り職人の技を機械作業に落とし込むことやサービス手法のマニュアル化などが挙げられます.